コミュ障は本の虫の夢を見るか?

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【映画原作】蝿【異色作家短篇集】

こんにちは、tori1031です。

「蝿男の恐怖」や「ザ・フライ」の原作、「蝿」の作者の異色作家短篇集を読みました。

蝿(はえ) (異色作家短篇集)

蝿(はえ) (異色作家短篇集)

蝿(はえ)

ジョルジュ・ランジュラン

どの短編も誰かに捧げられていて、登場人物にその名前が使われることもあります。酷い目に合う事もあります

以下目次やあらすじ、感想など。

はしがき

時を主題とするサイエンス・フィクション作品は、まず失敗することはないと言われるが、ランジュランのものはまったく独創性に満ちていて、その理由はたぶん彼の内部体験から抽出されたものだからだと思われる。

ジャック・ベルジェさんによる推薦文です。期待が高まります。

主人公には優秀な科学者の弟がいました。弟の妻からの電話で彼女が弟を殺害したことを聞かされます。警察へ連絡して優秀な警部と現場の工場に駆けつけると、頭と左手が50tもあるスチームハンマーの下敷きになった弟の死体がありました。
義妹は自認こそしたものの、他のことを一切喋らないため真相はわかりません。蝿に執着する彼女は狂ってしまったのか、それとも狂ったふりをしているのか。

読んでいなくても映画などで設定は知っているという人もいるのではないでしょうか。
初代ポケモンで同じような目に遭っていた人もいましたし…

設定や結末を知っていましたが、面白さが半減するようなことはなかったです。 序盤から出ている真相に関わる単語を見つけてにやりとしたり、主人公や弟夫婦の心情に触れたり、一度読んだ本を読み返すような楽しさがあります。

奇跡

機関車の脱線事故から奇跡的に助かった男は、足が動かなくなったと多額の賠償金を得ました。しかしそれは賠償金を増やす為の嘘でした。いつまでも歩けないフリをするつもりのない男は、次に奇跡的に足が動くようになったことにしようと企てます。

どうやって医者を騙したのかが気になりますが、突っ込むところはそこじゃないので置いときます。
うまいこと人を騙す男の転落をいまかいまかと待ちながら読んでいました。いや、うまいこといきすぎてるので何処かで失敗するはずだと思ったのでついそんな読み方になってしまいました。
どうなったかは読んでみてのお楽しみということで。

忘却への墜落

速度を増しながらどこまでも落ちていく――主人公は昔からこの悪夢に悩まされてきましたが、今ではこれを見ることを歓迎していました。
妻を殺した疑いをかけられた主人公は、そのときのことを覚えていないものの自分はやっていない確信がありました。悪夢を見るとそのショックで徐々に思い出しています、もっと長く墜落すれば無実も証明できるはず…

落ちていく夢というとジョン・コリアの「夢診断」を思い出します。話の内容は違いますが。 読み終わったときも他に連想した話があるのですが、それ書くとネタバレになってしまいますね。

早く思い出さないと死刑になるのに主人公が落ち着いていられるのが不思議でなりませんでした。

彼方のどこにもいない女

弟の事件の調査をしていた主人公は弟の別荘に訪れますが、そこで悲惨な事件は偶然起きたのではなく、責任の一端は弟にもあると感じます。音を拾うように部品が足されたテレビ、誰かに当てられたメッセージや"彼女"の写真の端…それらや妻の協力で辿り着いた信じがたい真相を物語として纏めます。

次元違いの恋は切ないものですね。…我々の想像する相手より次元が二つほど多いですけど。
悲惨な事件が想像以上に悲惨だった件。

御しがたい虎

背の低いことがコンプレックスなダルボン氏は催眠術について学んでいました。背の高い魅力的なガザード夫人や彼らの伴侶とともに動物園を訪れ、ダルボン氏は動物相手に催眠を行えることに気付きます。様々な動物を相手に確信を得たダルボン氏は、最後に虎の前で自身の能力について話しますが…

(あかん)

他人の手

外科医に妙な患者がやってきます。彼はいたって健康な彼自身の手首を切断してくれと言うのですが、これは自分の手ではないからだと言います。医者は手術を断りますが、その後運ばれてきた急患は自分で手を切断した彼でした。何がそこまで彼を追い詰めたのか。彼に自分の手が他人の手になった話をさせます。

星新一ショートショートに「移植された部位が元の人格に基づいて動く話」がいくつかあったのを思い出しました。自分の思い通りに動くと無条件で信じている分、自分の体が自分の意思に逆らって勝手に動くというのは考えるのも嫌ですね。

安楽椅子探偵

主人公はリウマチを患ったおじいちゃん。我が家が騒がしい、どうやら赤ん坊が誘拐されたらしく…。

違和を感じながら読み進め、その正体がわかったときの驚きと納得。最後のあたりのおじいちゃんの気遣いなど、良い物語が読めました。

悪魔巡り

「もちろん、取り決めをしておくのさ。あんたの魂とひきかえに、もう一度あんたに機会をあたえてあげよう」

妻の悪化した喘息のために老いた愛犬を安楽死させた男は、その夜に妻も亡くしてしまいます。こんなことなら…そこに悪魔がつけこみ、「もう一度」を望んだ男は契約します。

現代版童話みたいな話です。男は動物の気持ちが分かる人だったから、安易に男が悪いとは言えないのかもなと思いました。優先度、人>動物というのも人<動物というのも極端すぎるのは駄目ですけど、かといって人=動物も無理だしなあ。

最終飛行

これが最終飛行で、これからは食後もゆっくり休めるし、事務所で秘書と無駄話でもして過ごさなけりゃならんのだからな

パイロットの主人公は1001回目のフライトで引退することになりました。ラッキーと呼ばれる主人公は、戦争中を含めても死ぬほど危険な目にあったことはないといいます。しかし最後のフライト中、窓の外に奇妙なものが…。

「妻が心配するからこれで最終飛行なんだ…」
こういうの出たらすぐ「フラグかな」って思うようになってます。悪い癖ですね…。

考えるロボット

事故で恋人を亡くした女性に頼まれ、主人公は墓地に忍び込み彼の棺を覗きます。そこには何も入っておらず、女性は恋人が生きていると思ったから主人公に確認してもらったと言います。
何故そう感じたのか、それは恋人の癖を持ったチェスをするロボットを見たからだと女性は言います。
ロボットではチェスはできない、中の人がいるはずだと主人公は調査しますが…

チェスを知っていれば、一人にしろ、大勢の人間がかかるにしろ、たとえ一生涯を捧げてもチェスの無限の組み合わせをロボットに植えつけることができないのを承知のはずです。

コンピュータにチェスや将棋が出来る時代が来てしまいました。かがくの ちからって すげー!
最近よく人間とコンピュータで将棋やっていますが、コンピュータ側のメモリとかに縛りを設けても良いと思います。人間が思考停止するようにコンピュータにも処理落ちとか面白そうです。…プロ棋士は思考停止しないでしょうけど。

終わり方は似ていませんが、話の展開に乱歩を連想しました。


謎を追う話が多いので、異色さよりも冒険・探検要素が強いよう思います。
どきどき感を味わいたい人は是非。