本の虫もどきは働きたくない

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【妄想暴走】虹をつかむ男【異色作家短篇集】

こんにちは、tori1031です。

異色作家短篇集から、一発変換だと「二次を掴む男」と羨ま違うタイトルになってしまったこの本を読みました。

虹をつかむ男 / ジェイムズ・サーバー

虹をつかむ男 (異色作家短篇集)

虹をつかむ男 (異色作家短篇集)

目次 ( 原題 )

  • 序文
  • 虹をつかむ男 ( The Secret Life of Walter Mitty )
  • 世界最大の英雄 ( The Greatest Man in the World )
  • 空の歩道 ( The Curb in the Sky )
  • カフスボタンの謎 ( The Topaz Cufflinks Mystery )
  • ブルール氏異聞 ( The Remarkable Case of Mr. Bruhl )
  • マクベス殺人事件 ( The Macbeth Murder Mystery )
  • 大衝突 ( Smashup )
  • 142列車の女 ( The Lady on 142 )
  • ツグミの巣ごもり ( The Catbird Seat )
  • 妻を処分する男 ( Mr. Preble Gets Rid of His Wife )
  • クイズあそび ( Guessing Game )
  • ビドウェル氏の私生活 ( The Private Life of Mr. Bidwell )
  • 愛犬物語 ( Josephine Has Her Day )
  • 機械に弱い男 ( Mr. Pendly and the Poindexter )
  • 決闘 ( A Friend to Alexander )
  • 人間のはいる箱 ( A Box to Hide In )
  • 寝台さわぎ ( The Night the Bed Fell )
  • ダム決壊の日 ( The Day the Dam Broke )
  • オバケの出た夜 ( The Night the Ghost Got In )
  • 虫のしらせ ( The Luck of Jad Peters )
  • 訣別 ( The Departure of Emma Inch )
  • ウィルマおばさんの勘定 ( The Figgerin' of Aunt Wilma )
  • ホテル・メトロポール午前二時 ( Two O'Clock at the Metropole )
  • 一種の天才 ( A Sort of Genius )
  • 本箱の上の女性 ( The Lady on the Bookcase )

各短編 あらすじ・感想

序文

1945年に出版された「サーバー・カーニバル」の序文です。
サーバーがどう過ごしてきたか、これからどう過ごす予定かが知り合い視点で書かれています。

実際には私はサーバーを五十年知っているわけではない。サーバーはこの前の誕生日で四十八歳を迎えたにすぎないのだが、この選集の出版社が、このような大作の序文の標題としては"五十"という数が"四十八"という数よりも響きがよいと感じたものであって、私は議論にくたびれて引き下がってしまったのである。

虹をつかむ男

ウォルター・ミティは黙りこくってウォーターベリに向かって運転を続けた。二十年の海軍航空史上、最悪の大暴風雨を突破するSN二○二号機の爆音はしだいに遠ざかり、彼の心の奥にひめられた空路のかなたに消えていった。

海軍飛行艇は大荒れの天候を進んでいく……
車を運転していたウォルターは妻の声で現実に引き戻されます。
彼は現実から継ぎ目なく繋がる壮大な妄想をよく起こします。

ところ構わずやっちゃうのは問題ですけど、読んでいて気持ち良いくらいの妄想っぷりです。

日常生活に支障が出ないくらいの妄想なら自由にしていいかなと思ってます。
寝る前の妄想は安眠妨害になるのでやめたほうがいいらしいですね。じゃあいつすればいいのさ

世界最大の英雄

リンドバーグやバードに続き、飛行機で偉業を成し遂げた男がいました。男はボロの飛行機で世界一周無着陸飛行を成し遂げ、英雄となりました。しかし人格や言動に問題があり、英雄像とかけ離れた彼の姿に政府やマスコミは困ります。

偉業は偉人じゃなくてもできるから仕方ないね。
すごいことやってのけたとはいえ男は傲慢すぎました。

空の歩道

人の言おうとしていた言葉を先取りして発言する癖を持っていた女の子。彼女は成長すると次第に相手の言葉遣いや話の誤りを細かいところまでつっつくようになりました。 過剰な指摘をしてくる彼女と話していたら苛立ったり、気が滅入ってしまいます。そこに気付かず彼女と結婚してしまった男性も案の定まいっているようで…。

ジョセフかと思ったらもっと残念でたちの悪いパターンでした。

カフスボタンの謎

オートバイに乗った警官が、だしぬけに神秘の国から(白バイの警官とはそんなものだ)、音高らかにとばして来たときには、男は道ばたの深々と生えた草の中によつんばいになって、ワンワンと犬のように吠えていた。女は、そこから八十フィートほど離れた所にとまっていた自動車を、ゆっくりと進めていた。

カフスボタンを探していたと言う男女には不審な行動が多く…。

四つんばいになってた理由に呆れたり、最後の男女のやりとりに呆れたり。
面白い話なんですけどね。

ブルール氏異聞

顔に特徴的な傷を持っていう以外は平凡な風采のブルール。彼は平穏な生活を送っていましたが、突如それは崩壊します。
暴力団員クリニガンとブルールと彼がそっくりだと言われるようになり、ブルールは彼と間違えられることを怖がるようになります。
たちの悪い悪戯をうけたり、クリニガンに動きがあったり…そうこうしているうちにブルールにある変化が起こります。

命を狙われるほどの悪人と自分がそっくりで、しかも自分の傍に潜伏している状況…これはSAN値も減りますわ。

マクベス殺人事件

ミステリ小説と間違えて「悲劇マクベス」を購入してしまったと愚痴る女性。それを読み終えた彼女は犯人はマクベスではないと推理を披露します。

それミステリじゃない。けど読むつもりだったジャンルと違うものを自分なりにって良いですね。
女性の推理、ミステリのメタが入ってて面白いです。

既読でした。 昔読んだとき「シェイクスピア読んどけば良かったなあ」と思ったのですが、シェイクスピア読まないまま再読…。

大衝突

トミーは十五歳のとき馬車馬の制御でミスをして以来、乗り物の運転を避けるようになりました。
結婚してトミーは自動車をこわごわと安全運転するようになりますが、 自動車でも運転ミスを起こし、それ以降は妻が運転するようなりました。
ある日、妻が怪我をしてトミーが車の運転を代わることになりますが。

大衝突。
あだながとみーだし車の運転苦手だしで、トミーの運転苦手意識に同意しながら読んでました。

142列車の女

汽車が遅れていて駅で足止めを食らっている主人公や他の客は、駅長が電話をかけているのを聞きます。

「手配の御婦人は、一四二号のリーガン車掌が乗せています」

主人公の妻は女性が病気になったのだろうと言いますが、「手配の御婦人」という言い方は不自然だと感じた主人公は別の可能性を話します。

そして広がる壮大なストーリー(違)
「これだから女は」って主人公が考えてる場面で、主人公の方が間違ってるのにちょっと笑いました。

ツグミの巣ごもり

酒も煙草もやらない真面目なマーチン氏の職場に社長が特別顧問女性を呼びます。彼女は性格に問題があり、仕事もろくにできず、むしろ職場を荒らしています。
マーチン氏の部署にも魔の手が伸びてきたとき、彼は彼女を"消す"と決意します。
彼は自分が慎重な人間と知られていることを利用して、行き当たりばったりな殺人計画を練り、実行に移しますが…

社長が聞き入れないんじゃどうしようもないよなあ。いや殺すのは駄目なんですけど。
職場の嫌な人ってどう対処するのが正解なんでしょうね。

エラリー・クイーンの犯罪文学傑作選に「安楽椅子の男」というタイトルで同じ話が収録されています

妻を処分する男

中年の弁護士(既婚者)はいつも「かけおちしようぜ」と秘書をからかっていましたが、その日はいつになく真面目でした。
秘書の方はいつものように「いいですよ」と答えます。

「でも離婚させてくれるかしら、奥さんは?」
「無理だろうね」
「そんならまず奥さんのこと、処分してからでないと」
(台詞のみ引用)

これ秘書は「またからかって」と思ってたんだろうな。
この後奥さんのこと処分しようとしているんですけど…なんでこの人弁護士なのに馬鹿なんだろう。

クイズあそび

「宿泊していた部屋に忘れ物がありましたよ。それが何か、それをどうしたいかを連絡してください。二ヶ月経ったら処分しますね」byホテル …(°д°)

ちょっとあらすじふざけました。
いやでも何を忘れたかさえ分からないことありますよね。だから気付いたら物がなくなっていることがあるわけで。

ビドウェル氏の私生活

夫婦の会話。

「あなた、なにをしてるの?」
「ハアアアア、息を止めてたんだ」
「は?やめてちょうだい、イラッとするわ」
「息止めるのは俺の勝手だろう」
「馬鹿みたい。まるでグープね」

※ グープ : ビドウェル夫人の好きな言葉。何にでも使えるらしく、彼女はかなり雑に使ってきます。
ビドウェル氏はこの言葉にイラッとしています。

ビドウェル氏のどうでもいいことをついやりたくなる気持ちはわかるんですけど、時と場所を考えてないのは駄目ですよね。

愛犬物語

買おうとした犬 : スコッチテリア(スコティッシュテリア)

スコッティッシュテリア

( pixabay )

店先でつい買った犬 : ブルテリア

ブルテリア

( pixabay )

体も小さいし、芸も覚えない手間のかかる犬で、他の家に押し付けようとします。

テリアっていろいろいるんですね。イギーとか
駄目な子ほど可愛いこともあるんですけどね。後半の乱闘は熱いです。

機械に弱い男

ペンドリー氏が車で池に飛び込みかけて以来、運転は妻がするようになりました。
彼女は中古車で良いので車を買い替えたいと、ペンドリー氏を連れて車の展示へ連れて行きます。
機械に弱い彼なりにある出来事を頑張りましたが…

話聞いたげてよ…。

決闘

アメリカ副大統領だったアーロン・バーと、彼と決闘した政治家サンダー・ハミルトンが出てくる夢を毎晩見る男の話。そして男を心配する妻の話。
(夢で)男がハミルトンと親しくしていると、バーがハミルトンに暴力を加えます。それからハミルトンは男の弟をはじめ、親しい人たち全員にかわっていきます。
ある晩から夢でバーが加えるものが暴力から銃弾へと変わり…

これはつらい。男も妻も可哀想でした。

人間のはいる箱

箱の中に隠れたい。長らくそう思っていた私は食料品店へ箱を求めに行きますが見つかりませんでした。

箱に隠れたい願望はないけど分からなくもないような。

寝台さわぎ

父が屋根裏で寝た日に起きた事件、風が吹けば桶屋が儲かるような連鎖話です。

  • 父 : この日は一人で過ごしたかった、この日は古い危険なベッドを使う
  • 母 : 心配症、ものごとの良い面を見る
  • 弟 : 母のサポートにまわることが多い
  • 私 : 眠りが浅い(大嘘)、軍隊用の折りたたみベッドを使っている
  • いとこ : たまたま来ていた、寝てる間に息が止まることが怖い、気つけ薬のカンフルを枕元に用意している
  • 祖父 : 古いニュースにとらわれている、軍人気質
  • 犬 : いとこが嫌い
  • 兄 : 力作業は任せろー、(ごめんよくわかってない)

[ 父 ] 屋根裏 [母・弟] [私・いとこ] (私の向かい : 兄) 二階 祖父は外出中

どうしてこうなった。 各々の誤解や混乱っぷりが面白い話です。

ダム決壊の日

ダムが壊れたと誤解して町中がパニックになった話。「寝台騒ぎ」と同じ舞台です。
様々な人の混乱ぶりが書かれています。

これ誰も正しい行動とれなかったと思います。デマかを調べる時間も、ダムが壊れて本当に被害があるのかを調べる暇もなかったですし。

オバケの出た夜

幽霊の足音で家中が大騒ぎになる話。「寝台騒ぎ」「ダム決壊の日」と同じ舞台です。

[ 祖父 ] 屋根裏 [ 母 ] [ 私 ] [ 弟 ] 二階 父と兄は外出中

「寝台騒ぎ」の騒ぎほど連鎖は起こってないんですけど、一番大騒動してます。
生きている人間の方が怖い話でした ( ちょっと違う )

虫のしらせ

エマおばさんの使わなくなった客間には、テーブルに夫がこれまで「虫の知らせ」をうけたときの品がずらっと並べられており、壁に彼の全身大の写真が飾られていました。
どんな虫のしらせがあったかを全て語り手が知っているままに話します。

虫のしらせ : 危険なときに火力が上がる…なんとなく嫌な予感が起こること。
話盛られすぎて虫のしらせ関係ないのがちらほらと…そりゃおばさんも聞きたくなくなりますわ。

決別

避暑地に料理してくれる人を連れて行こうと、どこにでもいそうな女の人を雇った夫婦。
その女性を問題なさそうな人物と思っていましたが、飼っている犬への執着や妙なこだわりを持っていて…

うわあ。
この女性、友人からの紹介なんですよね。友人は何考えて紹介したんだろう。彼女についてよく知らなかったとかでしょうか?

ウィルマおばさんの勘定

暗算の苦手なウィルマおばさんと、暗算の得意な食料品屋のおじいさんはともにけちでした。
あるとき、つり銭をめぐって問題が起こります。

「600円のお会計です」 おばさん)つ1000円札 「400円の…すみません。100円玉が足りないのでもう100円くれませんか?500円玉で返しますから」
「なんで私が100円多く払わないといけないのよ!」
※金額は適当、日本円に置き換えています

こういう人いますよね。他の考え方を理解しようとすることを放棄しないよう気をつけたいです。
最終的に「これだから男は」って、おいおい。

ホテル・メトロポール午前二時

賭博師ハーマン・ローゼンタルがホテル前で、車から降りてきた四人組の男達に取り囲まれ射殺されました。
ローゼンタルは殺される二日前に「ベッカー警部に金を渡していたのに、賭博場を閉鎖された」と警部の汚職を供述し、それが新聞に載っていました。
検察が罪を殺人の暴こうと証人を呼びますが、その中からも被害者が出て連続殺人に。

もらうもんもらっといて賭博所閉鎖する、汚職をばらされたら殺人を依頼する、さらに殺人…警部のkzっぷりがすごい。そこに痺れない憧れない

一種の天才

少年少女が見つけた、殺害された男女の二死体。この事件で150人以上が法廷や新聞の一面に出ましたが、ついに誰も有罪にはなりませんでした。
この150人の中で「豚飼い女」と「ウィリー」がすぐに思い浮かぶだろう、と話が始まります。

やはり天才か…

本箱の上の女性

サーバーが自身の描いた絵を、5つのグループに分けて、どうしてこう描いたか、どうしてそのタイトルをつけたかなどを説明しています。

「目はそんなに大きなくせに、心はどうしてそうちっちゃいんだ?」
この題好きです。

自分の話だからか、他の物語より文章が生き生きしているように感じます。面白かったです。


妄想・破局・思考停止な話が多かったです。短いのでさくさく読めますし、どの話にもなんともいえない絵が描かれていてふふってなります。

SSが好きな人、妄想暴走止まらない人は是非読んでみてください。