本の虫もどきは働きたくない

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【あたいは】蜜のあはれ / 室生犀星【殺されない】

こんにちは、tori1031です。
先月、金沢へ一人旅してきました。良いところです。また行こうと思います。

金沢へ行く前に、、青空文庫を利用して室生犀星蜜のあはれを読みました。

蜜のあはれ / 室生犀星

先に「手のひらの金魚」を読んでから読むと良いらしいです。
…ええ。やらかしましたとも。

室生犀星

大正から明治時代にかけて活動した詩人・小説家です。
初期は詩を書いていましたが、次第に小説を書くようになりました。

郷里や動物や家族を愛した金沢三大文豪の一人です。
残りの二人は泉鏡花徳田秋聲です。

…今回も有名な作家らしいんですが…私は知りませんでした。ごめんなさい。
「だだだって教科書で見たことないし…」と思ってましたが(以下徳田秋聲あらくれと同じ)
…先生、ごめんなさい。

小さくて可愛い字を書かれていたそうで、専用の原稿用紙は一般的なそれより小さいです。
ただ、これは病気で体の弱った犀星が極力体力を減らさないよう字を小さくしていった結果だそうです。切ない。

…いまいちまとまってないなあ。
もっと知りたい方は、室生犀星記念館さんの説明ページ へ移動してください。簡潔な説明かつ年表もあって分かりやすいです。

蜜のあはれ?

始めから終わりまで会話文で書かれ、
節々にエロい艶のある話が挟まれた物語です。

この可愛い女の子がなんと金魚。 ええ、金魚です。

飼っていた金魚をモデルにした可愛い女の子(に化けている金魚)と
犀星自信をモデルにした老齢の小説家のやりとりを主に進みます。

「ばれちゃったわね、おじさまが小説の中で化けて見せていらっしゃるのよ、もとは、あたい、五百円しかしない金魚なんです。それをおじさまが色々考えて息を吹きこんで下すっているの、(略)」

小説家は小説の中で金魚に人間の姿を与え、金魚は小説家と恋人になる提案をします。

人間以外の登場人物は金魚だけにとどまりません。
こちらは綺麗な女の人です。

彼らの迎える結末は、

~~ゆ。°

上でも描きましたが、自身と飼っていた金魚を元に書いた作品です。
会話文のみで書き進めているうちに、犀星はこれじゃ不格好になると思ったそうです。しかし、

たとへ失敗に終つても生涯に一度くらゐ失敗したつてよいといふ度胸を決めて了つたのである。

こう思い、犀星は作品を最後まで書き上げました。

感想

全て会話文のためテンポよく読めます。

その反面、台詞のみで話が進むのでどうしても「○○をして~」「○○と思っているでしょう」等、
会話に実況や説明が含まれ台詞が長くなるし、逐一情景を想像しないといけません。

しかしそれがあっても、登場人物が皆生き生き描かれているので然程苦にはなりませんでした。
小説読むのが苦手って方もこういう形式なら読みやすいのではないでしょうか。

あ。色のある話が多いので苦手な方は読まない方がいいです。
嫌な思いしてまで読本を増やす必要はないかと。

~~ゆ。°

おじさまは遊んでくれないの、つまんないな。

金魚ちゃんがかわいい。
(金魚ちゃん自分で名前つけてるんですけど、私は金魚ちゃんと呼んでいるのでこれで通します )

色気のある話もすれば、その理論はアウトでは?となる発言も飛び出してきますが……
それでもかわいい。

この子一人称単数が「あたい」なんですよ。
飼い主の作家(モデルは犀星)を「おじさま」って呼ぶんですよ。
無邪気でおてんばでちゃっかりしてて、恥じらうシーンもあるんですよ。
……ちょいと暴走しました。

世話焼きな子です。
周りの人たちに幸せになってほしくて頑張っているのが伝わってきます。

元が金魚なので、メダカとか、尾ひれとか。金魚のときはどんな感じかって話があるのですがそれがまた面白いです。

好きな箇所はたくさんありますが、例えば 他の金魚があまり良くない環境で飼育されているのを見て、可哀想だからと面倒見るシーンが好きです。周りの目より相手を気にかけるか金魚ちゃんわいい。

あ。あと、鯨になったらおじさまにこうするって発言も好きです。
曲解すればヤンデレと読み取れるので(真顔)

~~ゆ。°

作家のおじさまもかわいいです。
優しいけど、ちょっと頑固なところがあって、茶目っ気のあるおじいちゃんです。

頑固さや、突然の尻談義ぶっ飛んだ発言で金魚ちゃんを困らせることもあれば、
金魚ちゃんに意地悪を言ってからかうこともあります。

それでも「金魚ちゃんのこと好きなんだな」って思ってほっこりします。

死後金歯を譲らないってくだりが好きです(笑)

~~ゆ。°

金魚ちゃんが見つけるある人物はあと一歩の勇気が出せない方です。
金魚ちゃんはそういう部分を指摘してズバッと言いつつ気にかけます。

そこまでやったんだから最後までやり抜こうよって思う気持ちと、
ここまではなんとか出来たけどこれ以上はやっぱ無理ってなるのはすごくわかる気持ちとでもやもやしました。

~~ゆ。°

この作品、2016年に実写化された映画があるんですね。知りませんでした。
キャスト見たら芥川龍之介や、どの登場人物に当たるのかわからない人がいたんですが、どうなんでしょう。

室生犀星芥川龍之介は親しかったので無関係ではないですが、蜜のあはれの頃には亡くなっています。
回想で出るんでしょうか?

そして本当に誰だあの女。
仮にあの登場人物なら、キャスト紹介に混ざれるほど出番あるキャラクターじゃないぞ。

機会があれば見るかもしれません。多分。

~~ゆ。°

始めから終わりまで「金魚ちゃんかわいい」って、金魚ちゃんの虜になりながら読んでいました。
今も思っています。

  • 金魚が好きで、擬人化に抵抗がない人
  • 会話文のみの話を読んでみたい人
  • かわいいものが好きな人

こんな方は是非読んでみてください。

「けふといふ日が、あたいならあたいの中に生きてゐる証拠なんでせう。」 「さう言ふより外に、言いやうがないね。」

~~ゆ。°

おまけ

金沢旅行で室生犀星記念館に寄りました。
展示はもちろん、ミュージアムショップも素晴らしかったです。

自分用のお土産に買った「猫の箸置き」が可愛くてお気に入りです。
万年筆をちょっと置くのに使っています。

~~ゆ。°

おまけ2

徳田秋聲とは趣味の庭いじりで仲良くなったそうで、 今でも徳田秋聲旧宅の庭には犀星が秋聲に贈られた竹が元気に育っているそうです。 (他にも犀星は植物を贈ったようですが、流石に残っていないそう)