本の虫もどきは働きたくない

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【地味に真面目に】死神の浮力【仕事をするもの】

こんにちは、tori1031です。

気づけばブログを始めて一年経っていました。
…スローペースがだいぶ癖になってしまっていますね。
本はまあまあ読んでいるんですけど、記事にするのを放置してました。

それは一旦おいといて(ダメ)、久々の記事はこの本を。

死神の浮力 / 伊坂幸太郎

死神の浮力

死神の浮力

あらすじ

人間の25人に1人が良心を持たない「サイコパス」。 それが作家の山野辺が以前調べたサイコパスについての情報、そして最愛の娘を殺めた人間の性質でした。

娘を殺害した犯人である本城の無罪をニュースで見る山野辺と彼の妻。
山野辺夫婦は本城への復讐を企てていました。

夫婦の自宅前には、コメントをとろうとマスコミが張り付いています。
そこに雨を引き連れ、ママチャリで現れた黒尽くめの奇妙な男。

男は夫婦に情報を持ってきた、同行したいと伝えてきます。
彼は「千葉」と名乗りました。

山野辺夫婦は見ず知らずで、しかも色々とずれている千葉と共に復讐計画を実行に移しますが…


感想

「死神の精度」を読んでいたので、千葉が来ただけでテンションが上りました。
こっち読む前に「死神の精度」は読んでいたほうが良いと思います。
読んでいないと話がわからない、ことはないですが小ネタが少々ありますので。

千葉が夫婦と同行するために「弟が本城に虐められた挙句殺された」ってことにしているんですが
終始淡々としていて、「お前もうちょっとそういう演技しろよ」ってツッコミ入れたくなりました。
そんな千葉をパーティに加え続ける夫婦にはもっとツッコミたいです。夫婦もだいぶずれている気が。 けど千葉は魅力的だから仕方ないですよね

あとすごくどうでもいいですが、私は千葉の台詞をついエルシャダイルシフェルで脳内再生してしまいます。本当にどうでも良いですね。

序盤にちょっとした説明付きでモブ(仮)が出てくる度に「中盤~終盤絡んでくるんだろうなあ」と思いながら読んでいました。
「伊坂作品だし多分そうなる」的なメタ読みでつい。結果は読んで確かめてください(投)

千葉の同僚含め、死神は相変わらず良いキャラしてて読んでて楽しかったです。
仕事人間の千葉に対して、他の死神達は手を抜きたがるんですよね。楽したいよね

今回は情報部の事情が絡んでややこしく、いや大してややこしくはないんですけど。これない方が好、いやでもこれないと長編にならないだろうし
「死神の精度」のときは短編ごとに調査対象が変わっていたのに対し、「死神の浮力」では一人に絞られているのでその為でしょうか。

けど、調査対象が一人のまま話が進んだおかげで対象が何を思っていたかよくわかります。
特に死ぬことに関してどう思っているか、思っていたかは見どころだと思います。…見どころじゃなくて読みどころって言うんでしょうか?

こうは言ったものの、もしまた千葉の話が読めるなら精度のときの短編集形式がいいなと思います。
一人に深く関わる長い話もいいけど、いろんな人間とテンポよく絡む方が千葉の雰囲気には合ってる気がしまして。
まあただの個人の好みなんですが。


伊坂作品、死神の精度が好きな方、
渡辺一夫、カント、パスカルが好きな方は是非。

「これは私の言葉だ」

【かわいい】世界のかわいい小鳥~Little Birds~【かわいい】

こんばんは、tori1031です。

こんな日は癒されたかったのでこんな写真集を手に取りました。

世界のかわいい小鳥 ~Little Birds~ / 監修:上田恵介

世界のかわいい小鳥

世界のかわいい小鳥

とりあえず「シマエナガ」でぐぐってみてください。
可愛いですね。こういう子が沢山載っています。

感想

P6の破壊力。可愛い。
いや、全ページかわいいんですけども。
でもP97の開脚っぷりは油断していてぶふってなりました。

ツバメって紺と赤の組み合わせだけじゃないんですね。知らなかったです。 他にも、知らないことだらけでした。 メジロに対してメグロがいることも知らなかったし、色んな種類の青い鳥がいることも知りませんでした。

名前も姿も有名な子から全然知らない外国の子まで様々な小鳥が見られました。楽しい。

監修の上田恵介さんの小鳥談義を挟み、最後に索引があります。 索引には

【写真】 * ページ数 * ○○目/●●科 * だいたいの大きさ * 鳴き声

が載っています。


存分に癒されました。
次は梟とか猛禽類でも見ようかな。癒されるってよりはテンションが上がる系ですが。

【奇想コレクション】元気なぼくらの元気なおもちゃ【酒!薬!S●X!】

こんばんは、tori1031です。

奇想コレクションからこの本を。

元気なぼくらの元気なおもちゃ / ウィル・セルフ

酒!薬!セッ●ス!
…そんな話が詰まってます。

目次

  • リッツ・ホテルよりでっかいクラック
  • 虫の園
  • ヨーロッパに捧げる物語
  • やっぱりデイヴ
  • 愛情と共感
  • 元気なぼくらの元気なおもちゃ
  • ボルボ七六〇ターボの設計上の欠陥について
  • ザ・ノンス・プライズ

各短編 あらすじ・感想

リッツ・ホテルよりでっかいクラック

黒人の兄弟がクラック(麻薬の一種)を売りさばく話。
弟は薬やっていますが、兄はやらないことを信条にしています。

兄はかつて麻薬の売人をやったり、軍隊に入ったりしました。
家に戻って何か薬売り以外のまっとうな職に就こうとしていた矢先、家の地下室の壁の中に大量のクラックを見つけます。
考えを変えた兄は、そのクラックを売りさばきます。
弟に薬を売らせたり、自分も顧客を捕まえたり。
そうこうしているうちに、いくらでも買ってくれるお得意様がつきます。

建物はずっしりと重そうで、箱のように四角くて、そして白い。ミルクのように、透き通るように白い。

私の知っているミルクと違いますね…
この後も「ミルクのように」が出てきたんですけど首を傾げながら読みました。よくある表現なのにね。 気にするところ間違っているとは思います。

薬キメてる描写が事細かで、絶対体験したくないなと思いました。
薬、ダメ絶対。

虫の園

索引作りが仕事のジョナサンが虫と共に生活する話。

無個性な町で、コテージに常に寄ってくるうっとおしい虫や、ときどき訪れる連れにうんざりする日々。
色々と考えを巡らせたある日、小さな虫の群れがその身で文章を作ったのに気付きます。
「虫ノ園ヘヨウコソ」
虫達は彼の生活の手伝いをする代わりに、蝿取り紙などの虫を殺す道具を捨てて欲しいと伝えてきます。
そうして始まった生活はなかなか快適で…

田舎暮らしなら虫には慣れねば。…いや慣れていても嫌なことありますけど。

この短編集の中ではわかりやすい話、らしいです。
確かに流れはわかりやすいけど、途中の主人公の見た夢とか気持ち悪いのであまり人には勧められないかなあ。

とりあえず蝿の持ち上げられる重さの限界が気になりました。

ヨーロッパに捧げる物語

二歳児のわけのわからない言葉に悩むヨーロッパの夫婦の話。

上記の問題は高齢出産のせいではないかと不安になっています。
悩んだ結果、夫婦は病院で子供に詳しい検査を受けさせます。
一方、ドイツからやってきた60代男性は、疲れからか考えが纏まらず仕事に集中できないでいました。

老人視点がなければもう少しわかりやすいような、でもいないと話違ってくるような。ううむ。
医者はああ言っていたけど、Aのことを全く知らない人が当たり前のようにAの知識使ってたら気味悪いと思います。

やっぱりデイヴ

いつものカウンセリングを終えた主人公は、三人のデイヴがいるカフェに向かいます。
その中から友人のデイヴとおしゃべりしたり、悩みを打ち明けたりしていた主人公は、ふと友人の持つ特徴に気付きます。

これわかんない。
デイヴだらけなのが嫌だったのか、デイヴだらけなのを望んでいたのかさえわからない。

でも自分がわからない、っていう気持ちはわかる気がします。気が。

愛情と共感

大人たちは4mほどの巨人「エモート」とともに暮らしています。
エモートは子供らしい性格ですが、ペアの大人を精神面を守るように動きます。

エモートに自分と同じような服を着させている男女が、怯えながらも距離を縮める物語。
しかし大人や子供に妙な点が。

エモート、2mくらいなら欲しいような…いやいたら余計人と話そうとしなくなるから駄目ですな。

大人とは一体。
解説では「ラスト解せぬ」みたいな書き方だったけど、主人公達がエモートへ持った違和感の答え合わせに必要だったのかな、と思いました。

「あれ?」って思いつつ、「そんなはずない」と目を背けてしまうのはあまり良くないことかもしれましんが、自己防衛なら仕方ないのかな。

元気なぼくらの元気なおもちゃ

車と一体になる感じが好きで、酒や薬をとりながら長距離を無茶なスピードと運転で走る主人公。
途中で拾ったヒッチハイカーを質問攻めし、彼の情報を一方的に引きずり出します。
向こうが主人公のことを何か聞き出した時点で辞めるつもりでしたが、そうはならず…

タイトルは実際のおもちゃのCMの宣伝文句だそうです、作中でも言われていました。

主人公は色々考えすぎたのかな。その割に思考停止して逃げてるからかえってしんどくなったのかと。
とりあえず無茶な運転やめてください。

ボルボ七六〇ターボの設計上の欠陥について

「元気なぼくらの~」の少し前の話。
浮気・不倫していて、精神的に不安定な主人公の話。

車体と身長のくだりとか、説明書のくだりとか、読んでいるこちらが不安になります。

「元気なぼくらの~」で主人公がどうなっているかわかっているだけに余計救いがないです。

ザ・ノンス・プライズ

「リッツ・ホテルより~」の続編。
大量にあったはずの地下のクラックはあっという間になくなり、兄弟の立ち位置も逆になっています。

兄が薬をやっていなかった頃、軍に入るより前に薬を売りさばいていた頃。
彼は主人から麻薬をちょろまかしたことがありました。
その主人が兄を見つけ、復讐のため動きます。
結果、兄はやってもない犯罪、子供へ性的暴行を加えた挙句殺害した極悪人として収容されてしまいます。
薬が抜け、正気に戻った兄が無実を主張し外に出ようと動いた結果、なんと短編小説を書くことに。

「リッツ・ホテルより~」のときの兄のキャラが気に入っていたので、前半読むの辛んい辛かったです。

「電気工事ができるようにと思って申し込んだ講座が小説講座だった。何を言っているのかわからないと思うが(ry)」
ここのくだりは不覚にも笑いました。前半辛かった分、ここからはわくわくしながら読みました。
ラストは色々ありすぎて、うぇー…って。いやまあ。全部上手く行くわけないから自分の読み方が悪いんですけども。
最後のあの人の発言は悪い意味で使われていると思います。煽り。


一つの話で、主人公の考えが色々出てくるものが多く、主人公が色々キメてらっしゃることも多く。
読んでいて疲れましたが、普段手を出さないような話の詰まった本なので新鮮でした。

上手く表現できていませんが、ごちゃごちゃした話が読みたい方は是非。

【夜行バス】広島から静岡県の佐野美術館へ行きました【電車】

こんにちは、tori1031です。

先週、本田忠勝が使っていた槍「蜻蛉切」を見に静岡県の佐野美術館まで行ってきました。
残念ながらというか、当然というか、写真撮影は禁止でした。

すっごく穂先が綺麗でした。

交通手段

夜行バスで愛知県まで行き電車で三島まで行きました。
移動にはだいたい約10時間かかりました。片道でです。

夜行バス

夜行バスは広島から乗ってだいたい6時間かかりました。
時期や曜日によって価格は変動しますが、このときは土曜日を挟んでの往復で14500円になりました。

ロイヤルエクスプレスさんのバスを利用したのですが、紙パックのお茶がもらえて、ブランケットが借りられてありがたかったです。

よく夜行バスに乗るなら席が3列のものを選ぶといいと聞きますが、私すっかり忘れていて4列を予約していました。
コンセント借りるときと、休憩所で降りるときに隣の席の人に声かけなきゃいけないので、多少お金払っても3列の方がよかったかなと思いました。

バスの走行音が意外と煩いので、夜行バスに乗る際は耳栓を持っていくことをおすすめします。 アイマスクを持って行くのを忘れましたが、持っていたタオルで代用できました。見た目さえ気にしなければ荷物減らせますね。

あと、お互いに快適に過ごす為にバスのルールをきちんと聞いておいた方がいいと思います。

  • 飲酒禁止
  • 煙草禁止
  • 消灯中のタブレット端末等明かりのつくもの禁止

とかです。
バス会社によって異なるはずです。

電車

電車はJR東海道本線を利用してだいたい4時間かかりました。
ICOCAの履歴によると片道4430円。…ジョ●ダンで調べたときより多く払っているような。

まず名古屋駅で「豊橋行」の電車に乗ります。
新快速で1時間未満で豊橋駅の6番ホームに着くと思います。

豊橋駅に着いたら「浜松行」の電車に乗るべく8番ホームへ移動します。
30~40分で浜松駅の4番ホームに着くと思います。

浜松駅に着いたら今度は「興津行」の電車に乗るために2番ホームへ移動します。
50~60分で静岡駅の4番ホームに着くと思います。

最後に「三島行」の電車に乗るべく1番ホームへ移動します。
三島駅まで1時間はかかります。お疲れ様でした。

ここまで書いておいてあれなんですけど、●番ホームの辺りは時間によって違ったような気がします。流石、田舎の駅とは違うなあ。

お疲れ様、と書いておいてあれなんですけど
佐野美術館に向かう為には「伊豆箱根鉄道駿豆線 修善寺行」に乗る必要があります。
元気だったら徒歩で行ってもいいとは思いますが…私は無理でした。

東海道の出口で精算して、伊豆箱根鉄道駿豆線の入口で切符を買います。 「三島田町」の切符は140円でした。

5分もかからず三島田町駅に着くと思います。
あとはその辺の道案内看板を見るなり、自分で用意しておいた地図を見るなりして美術館へ向かいます。
今度こそお疲れ様でした。

ぶっちゃけ

ここまで書いておいてあれなんですけど、新幹線使った方がいいと思います。

  • 睡眠時間が削れても気にしない
  • 長時間電車に乗るのが苦にならない
  • 出費を抑えたい(広島からなら片道4000円くらい安くなる)

このくらい理由があれば新幹線使わない方向で行きましょう。

「蜻蛉切」

上の方ですでに書いてるけど

57回出陣して一度も傷を負わなかったという徳川の武将、本田忠勝が使っていた槍です。
「穂先に止まった蜻蛉が両断された」逸話からこの名が付きました。

この槍は東の日本号、西の御手杵が含まれる「三名槍」の一本です。
どうでもいいけど何でも三でくくりたがるよね

梵字が彫られていることとか、あの刃物の模様、なんだっけ。刃紋?が思ってたのと違って乱れていたとか、色々書くことはあるんですけど
穂先がほんとに綺麗でした。語彙が少ないので単純な言葉になりますが、ほんとに綺麗だったんです。

他の短刀・脇差・太刀と合わせて30分は眺めていました。
帰りにポストカード買いました。ポスターは曲げずに持ち帰る自信がなかったので断念しました。

おまけ

食べ物

  • みしまコロッケ
  • わさびソフト

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三島大社の目の前の、通りを挟んだお店で食べられます。 写真綺麗に撮れてませんでした(´・ω・`)

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みしまコロッケは地元で育てたじゃがいも「メークイン」にこだわっているそうで、甘くてほくほくでした。
揚げたてでくれるので更に美味しかったです。
他店のみしまコロッケはさつまいもでした。謎です

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わさびソフトは…うん。
チューブとかのわさびよりは美味しいんだけど、よく混ぜて食べるより別々に食事とデザートで食べた方がいいなって。
私は舌がお子様なんで苦手だったけど、わさび好きな人なら美味しくいただけるかもしれません。
辛いものが好きな方には不向きかなと思います、甘いので。

帰りに浜松に寄って浜松餃子を食べる予定だったのですが、バスの集合時間を恐れて名古屋に戻りました。
…後で考えると余裕で浜松寄れましたけど。

名古屋の地下街?で味噌カツきしめんのセットを食べました。
「ミニ」ってついてたのにやってきた料理は二人分はありました…。
美味しかったし疲れていたので全部食べましたけどね。

しかし炭水化物多い一日だったなあ。

佐野美術館展示

11月29日(日)から1月24日(日)の間で「備前刀剣王国」の展示が始まります。

備前(今の岡山県)の誕生した古備前、一文字、長船、吉房などの名刀が集まるそうです。
その数およそ60点(うち国宝・重要文化財が14点)。

…もっかい行くかな。

次見に行く槍

12月に御手杵見に行く予定、だったんですけど…
仕事の納期とか、歯医者通いとかで行けるか不安になってきました。

御手杵は常設展示なので少し先延ばしにして、1月にへし切長谷部と日本号見ようと思います。
…我慢できずに結局御手杵見に行く可能性もありますが。

【弱者勝利】どんがらがん【奇想コレクション】

おはようございます、tori1031です。

ゲームがイベントラッシュで嬉しいような、時間の使い方間違っているような…

えと、奇想コレクションからこの本を。

どんがらがん / アヴラム・デイヴィッドスン

世界幻想文学大賞ヒューゴー賞エドガー賞…他にも色々受賞しており短編小説の名手だったそうです。

目次

  • 序文
  • ゴーレム
  • 物は証言できない
  • さあ、みんなで眠ろう
  • さもなくば海は牡蠣でいっぱいに
  • ラホール駐屯地での出来事
  • クィーン・エステル、おうちはどこさ?
  • 尾をつながれた王族
  • サシェヴラル
  • 眺めのいい静かな部屋
  • グーバーども
  • パシャルーニー大尉
  • そして赤い薔薇一輪を忘れずに
  • ナポリ
  • すべての根っこに宿る力
  • ナイルの水源
  • どんがらがん

各短編 あらすじ・感想

序文

元妻による序文です。

関係ないけど、離婚した人の「離婚しているけど関係は良好だし付き合いもある」って言葉を聞くたびに不思議な気持ちになります。

ゴーレム

秋の昼下がり、ガンバイナー老夫婦の住む通りに奇妙な人物が現れました。
灰色の肌を持つその人物は、陶器の歯を見せてこう言いました。

「この私がだれであるかを――いや、何者であるかを――知れば、あまりの恐ろしさにおまえたちの肉は溶け、骨から剥がれ落ちるだろう」

タイトルで何者かわかる件について

老夫婦の日常トークと男の非日常語りのちぐはぐさが楽しい小説です。
おじいちゃんかっこいいです、っょぃ(小声)

物は証言できない

奴隷が売買されていた頃の話。
弁護士兼奴隷商を25年続けてきたベイリス老人は、職業柄・人柄から町の皆に嫌われていました。
そんな彼が売った奴隷がきっかけで転機が訪れます。

読み終わって「ざまあ」ってならずにもやっとしました。
いかに老人が汚いやり方をしていたとしても、やり返し方が気にいらない…。

さあ、みんなで眠ろう

ガス抜きと称され行われた虐殺により、ヤフーと名づけられた人に似た種族は滅びかかっていました。
ヤフーに対する非人道的な行為を嫌っており、このまま彼らを滅ぼしたくない主人公は協力者とともに行動を起こしますが…。

舞台は宇宙です。

最後タイトル回収した瞬間どうしようもない気持ちになりました。
主人公は動物や種族が滅びたのを知ったときに悲しい気持ちになっていましたが、小学生の授業で絶滅した動物について調べたときの自分もこんな気持ち味わってたのかなあ。自分のことなのに思い出せません。

さもなくば海は牡蠣でいっぱいに

本の虫なファードと女好きのオスカーは自転車屋を共同で経営していましたが、三ヶ月前からオスカーが一人で経営するようになっていました。

「でも……ほら……言われて見るとたしかに……探しているときには、安全ピンって絶対に見つからないものだな」

ありえない出来事が起こった後、ファードはある恐ろしい考えに至ります。

SANチェック失敗 → アイデア成功 → 一時的発狂
こうですか、わかりませんねすみません。
思考停止は悪いこと、でも考えすぎてもろくなことにならないのでしょうかね。

しかし、これはオスカーが悪いなあと思いながら読みました。
いやファードも自己完結?する部分とか問題はあったけども。 でもオスカーは自転車借りるのも乗せようとしたのも悪かったです。

ラホール駐屯地での出来事

物書きにイギリスへ来ていた主人公は、冬の夜の寒さをしのぐべく酒場へ向かいます。
そこに常連らしい人気者の老人がやってきて、「ラホール駐屯地での出来事」について語ります。

話の基になっているのはラドダード・キプリングの「ダニー・デーヴァー」という詩だそうです。 知っているともっと楽しめるかもしれません。
私は知らなかったので読み終わって解説読んでやっと最後のやりとりがわかりました…

クィーン・エステル、おうちはどこさ?

クィーン・エステルは南国の出身、ただでさえイギリスの冬は寒いのに下宿先ではそれをあまりしのげません。
下宿先から離れたライディ家で家事をするのが彼女の仕事です。
旦那様と彼の弟(坊っちゃん)はエステルと普通―むしろ友好的―に接しますが、奥様は坊ちゃんのことでやたら彼女につっかかってきます。
そんな奥様はエステルを辞めさせる口実を得ようと、無断でエステルの荷物をあさりますが…。

奥様が元々あった問題をエステルのせいにしたり、可哀想な私アピールをしているので多いきり「ざまああああ」できました(酷い感想)

いやまあ、途中までは「嫌な奴だけど過保護すぎるだけかな」でなんとか無理やり済ませられるかもしれないんですけど

クィーン・エステルが二階の敷物に掃除機をかける準備をしているとき、奥様が部屋の戸口に現れ、目もとにハンカチを当てながらいった。「ねえ、わたしはけっして信心深い人間じゃないわ。でも、いまふっと考えたの。わたしが子供を授からなかったのは祝福だったって。それには不向きだと、神さまがお考えになったからよ。どうしてだかわかる?自分の生活をうっちゃってまで、子供につくそうとするからなの。ちょうどいまのわたしが、義父の子供のためにそうしてるようにね。(以下省略)

ここ読んで、そんな気持ちは露と消えました。

尾をつながれた王族

尾をつながれ自由に動けない王族達、そんな彼らに口を使って水や食料を運ぶ一つ目たち、彼らが必要以上に交流しないように目を光らせる見張り達。
王族達は見張りの目をかいくぐり、一つ目の一人に何かを伝えようとしますが…

存在しそうでしない動物を擬人化したらこんな話になりました、みたいな話…だと思います。

「おまえの口のなかにあるのは嘘だけだ。さあ、とっとと失せろ!」

見張りのこの台詞が好きです。

サシェヴラル

暗く、寒く、悪臭漂う閉め切った部屋の中には乱暴者のジョージと非力なサシェヴラルがいました。
ジョージはサシェヴラルから手に入るはずの100万ドルのことで苛立っており、サシェヴラルはジョージに捕まり自由を奪われたことを嘆いていました。
サシェヴラルがかつて行われていた楽しかったお茶会について話したり、ジョージがサシェヴラルをある理由で脅したり…

ラスト、つまりどっちだってばよ。
どっちとも取れるってことで良いんですよね?自信が無い…。

サシェヴラルの話に出る人たちを「あの職種かな?」とのあたりをつけて読んでいたので、当たっていたとき嬉しかったです。
こういう勘をもっと日常に生かせれば良いのですが…うまくいかないです。

眺めのいい静かな部屋

養老院(老人ホーム?)で生活するリチャード氏は、同室の住民達が悪気無く起こす騒動で毎晩眠りを妨げられていました。
同施設で生活しているハモンド氏との会話中にうたた寝してしまい、これは若かりし頃、ジャングルで過ごしたときの癖だと言って誤魔化します。
その場にいた人々はリチャード氏の話に興味を惹かれ、先を促すのですが、
ハモンド氏だけは彼の経歴を非難し、つっかかります。

登場人物が老人ばかりで、面白くなさそうだと思ったらそんなことはなく、がっつり面白かったです。
ラストはヤンデレで…いや違う違う。でもまああの発想の飛躍は病んでるような。
でも睡眠不足で疲れていたんだろうなあ。…素質も絡んでいるでしょうけど。

グーバーども

不潔で、他人を利用し自分は楽をする老害老人に育てられている主人公は、彼に反発するにはまだ幼く、言いなりになってきました。
盗みをしてこいと言われることもあり、嫌がる主人公への脅し文句にあるときから「グーバー」という単語が出てきます。
言う事を聞かなきゃグーバーどもに売りつけてやる。
グーバーが何かわからず、教えてももらえない主人公はグーバーを怖がりますが…

狼老人。

「いい子にしてないと鬼が来るよ」だとセーフで、「言う事聞かないと鬼が来るぞ」だとアウト。
いやまあ、そういう話ではないんですけどね。

意地悪な老人に使われる子供の話ってだけで「俗世の働き手」を思い出しましたけど、老害悪人ぷりが違いました。

パシャルーニー大尉

父を知らずに育った少年の通う学校へ、トンプスン少佐と名乗る紳士が訪れます。
少年は先生に呼び出され、少年は自分の父親が立派な人物だと知り喜びます。

その後少佐は少年を育てている親戚のもとへ挨拶に向かった後、少年と二人で過ごします。

パシャルーニー大尉は少佐が少年にした話の中に出てきます。

いつ少佐の化けの皮がはがれるのかわくわくしながら読んでいた自分は、もっと人を信じる心が必要だと思いました…。
いやでも、あからさまに「私は善人です」って登場人物いたら疑いません?

救いがあるようなないような。
そういう話じゃないと言われそうだけど、私はそう感じました。

そして赤い薔薇一輪を忘れずに

チャーリーの雇い主は彼に罵声を浴びせ暴力を振るうろくでもない奴でした。
チャーリーがいつものように疲れて帰ってきたある日、同じ建物(集合住宅?)に住んでいるアジア系の男性が困っているのに遭遇し、男性に手を貸しました。
男性は感謝し、自宅で始めたという本屋へチャーリーを連れて行きます。
珍しい本ばかりでしたが、支払いが面倒で高価なものばかり…。
その中に一冊、チャーリーを惹き付ける美しい本がありました。

本の値段聞いて展開を「あっ(察し)」していたら、本当にその通りになりました。

本欲しくなる気持ちも対価選ぶのも分かるけど、買う勇気はないなあ…。
でも同じ境遇で、実際に本見たら私もそうしちゃうのかなあ。
いやでも【ネタバレ】するのは簡単にはいかないし失敗したら危険だし、成功しても物を運ぶのが、いや運ぶ準備から大変だよなあ。
やっぱり労力に見合わないので溜息ついて諦めます。…いや道徳的に考えて諦めろって話なんですけども。

ナポリ

いまから二十年ほど前、若くもなければ年老いてもおらず、醜くもなければ美男でもなく、明らかに金持ちには見えないが貧しくも見えないひとりの男性が、波止場を出て赤煉瓦の宮殿のそばを通り過ぎ、古ぼけたナポリの下町の雑踏のなかへと足を踏みいれた。

そんな男性(旅行者)にひとりの青年が近づき、こっそり何かを申し出ます。
旅行者はそれに応じたのか、青年を追い、路地の奥へ奥へと入っていきます。

パスタが食べたくなりました。ところでナポリタンはナポリの料理ではないそうです。日本産だそうです。言われてみれば他のパスタとは雰囲気が違いますよね。
ナポリ

…いやナポリってつければ雰囲気出るかなと思ってつい。

外国って独特の雰囲気ありますよね。そんな感じが味わえる話でした。
…外国、台湾しか行ったことないですけど。

すべての根っこに宿る力

穏健な警察官のカルロスは最近悩みを抱えていました。
体のあちこちの痛み、物が二重に見える乱視、それから…
医者に診てもらうも、診断結果に納得のいかないカルロスは怪しげな祈祷師のもとへ向かいます。

カルロスが悪人でないことが説明された後に、

それだから、周囲のみんながこの自分を見るや、突如として――ときには文字どおり一瞬のうちに――変貌して、おそろしくもまたすさまじい悪魔的な形相になるのはなぜなのか、カルロスには合点がいかない。

この文章が入ります。
被害妄想の一言で片付けるのは置いておいて、実際に自分がそんな目にあったらと考えると…しんどいですね。
大人しく家に引き篭もると思います。仕事?知らない子ですね。
いや無職なわけではなくて、そんなときに仕事なんてやってられないかなって。

カルロス視点の前半も、もう一人の視点に変わった後半も話は面白かったんですけど、
読んでいる間ずっと、カルロスが可哀想でした。

ナイルの水源

小説家のボブ・ローゼンは原稿を見せに行く度に「これじゃ今のニーズにあってないよ、今は~」と、流行りがどんどん変わっていきOKがもらえません。
帰りのエレベータで変わった老人に「話をしにきた相手があんたに時間を割いたせいでできなくなった。酒を奢れ、代わりに良い話を聞かせてやるから」といったようなことを言われ彼に奢る破目に。 酔いがまわってきた頃、老人は流行を前もって知ることができると話しますが…

これだから女は…って言いたくなる気持ちと、
いや彼女と情報管理を疎かにしたボブが悪いって気持ちとでもやっとしました。

でも最後のボブの姿勢は好きです。
自分はすぐ妥める性質なので。

どんがらがん

呪法が盛んな<カナラス国>の王子マリアンは、国を救う呪法を探し旅をしていました。
嫌いな人種が管理している土地で老人に食事を振舞う破目になった後、遠くからものすごい音がしてきました。
老人に頼まれて丘を登ったマリアンが見たものは、巨大な金属製の筒に車輪のついた何かを押したり引いたりしながら運んでいる集団でした。
あれは何だと尋ねるマリアンに、老人は怯えた様子で<どんがらがん>が運ばれているのだと答えます。

取説はちゃんと読まないと駄目だなあと思いました(小並感←今更)
多分未来の話なのに、昔話を読んでいるような気持ちになれました。

マリアンは傲慢だけど実力があり、悪知恵が働く割りに抜けている面があり…魅力的なキャラクターですね。

続編があるらしいのですが、そのあらすじが「これネタバレじゃありませんか?」ってくらい簡潔にまとめられていて…
それでも邦訳探して読むべきかなあ…。


大方好きな話でしたが、特に好きなのは

  • ラホール駐屯地での出来事
  • クィーン・エステル、おうちはどこさ?
  • 眺めのいい静かな部屋

の三つです。

最後の解説どおり「善人(or弱者)は幸福に、悪人は不幸に」といった話が多かったよう思います。
例外もありますが、そういう展開の話が好きな方は読んでみてはいかがでしょうか。