こんばんは、tori1031です。
奇想コレクションからこの本を。
元気なぼくらの元気なおもちゃ / ウィル・セルフ
酒!薬!セッ●ス!
…そんな話が詰まってます。
目次
- リッツ・ホテルよりでっかいクラック
- 虫の園
- ヨーロッパに捧げる物語
- やっぱりデイヴ
- 愛情と共感
- 元気なぼくらの元気なおもちゃ
- ボルボ七六〇ターボの設計上の欠陥について
- ザ・ノンス・プライズ
各短編 あらすじ・感想
リッツ・ホテルよりでっかいクラック
黒人の兄弟がクラック(麻薬の一種)を売りさばく話。
弟は薬やっていますが、兄はやらないことを信条にしています。
兄はかつて麻薬の売人をやったり、軍隊に入ったりしました。
家に戻って何か薬売り以外のまっとうな職に就こうとしていた矢先、家の地下室の壁の中に大量のクラックを見つけます。
考えを変えた兄は、そのクラックを売りさばきます。
弟に薬を売らせたり、自分も顧客を捕まえたり。
そうこうしているうちに、いくらでも買ってくれるお得意様がつきます。
☆
建物はずっしりと重そうで、箱のように四角くて、そして白い。ミルクのように、透き通るように白い。
私の知っているミルクと違いますね…
この後も「ミルクのように」が出てきたんですけど首を傾げながら読みました。よくある表現なのにね。
気にするところ間違っているとは思います。
薬キメてる描写が事細かで、絶対体験したくないなと思いました。
薬、ダメ絶対。
虫の園
索引作りが仕事のジョナサンが虫と共に生活する話。
無個性な町で、コテージに常に寄ってくるうっとおしい虫や、ときどき訪れる連れにうんざりする日々。
色々と考えを巡らせたある日、小さな虫の群れがその身で文章を作ったのに気付きます。
「虫ノ園ヘヨウコソ」
虫達は彼の生活の手伝いをする代わりに、蝿取り紙などの虫を殺す道具を捨てて欲しいと伝えてきます。
そうして始まった生活はなかなか快適で…
☆
田舎暮らしなら虫には慣れねば。…いや慣れていても嫌なことありますけど。
この短編集の中ではわかりやすい話、らしいです。
確かに流れはわかりやすいけど、途中の主人公の見た夢とか気持ち悪いのであまり人には勧められないかなあ。
とりあえず蝿の持ち上げられる重さの限界が気になりました。
ヨーロッパに捧げる物語
二歳児のわけのわからない言葉に悩むヨーロッパの夫婦の話。
上記の問題は高齢出産のせいではないかと不安になっています。
悩んだ結果、夫婦は病院で子供に詳しい検査を受けさせます。
一方、ドイツからやってきた60代男性は、疲れからか考えが纏まらず仕事に集中できないでいました。
☆
老人視点がなければもう少しわかりやすいような、でもいないと話違ってくるような。ううむ。
医者はああ言っていたけど、Aのことを全く知らない人が当たり前のようにAの知識使ってたら気味悪いと思います。
やっぱりデイヴ
いつものカウンセリングを終えた主人公は、三人のデイヴがいるカフェに向かいます。
その中から友人のデイヴとおしゃべりしたり、悩みを打ち明けたりしていた主人公は、ふと友人の持つ特徴に気付きます。
☆
これわかんない。
デイヴだらけなのが嫌だったのか、デイヴだらけなのを望んでいたのかさえわからない。
でも自分がわからない、っていう気持ちはわかる気がします。気が。
愛情と共感
大人たちは4mほどの巨人「エモート」とともに暮らしています。
エモートは子供らしい性格ですが、ペアの大人を精神面を守るように動きます。
エモートに自分と同じような服を着させている男女が、怯えながらも距離を縮める物語。
しかし大人や子供に妙な点が。
☆
エモート、2mくらいなら欲しいような…いやいたら余計人と話そうとしなくなるから駄目ですな。
大人とは一体。
解説では「ラスト解せぬ」みたいな書き方だったけど、主人公達がエモートへ持った違和感の答え合わせに必要だったのかな、と思いました。
「あれ?」って思いつつ、「そんなはずない」と目を背けてしまうのはあまり良くないことかもしれましんが、自己防衛なら仕方ないのかな。
元気なぼくらの元気なおもちゃ
車と一体になる感じが好きで、酒や薬をとりながら長距離を無茶なスピードと運転で走る主人公。
途中で拾ったヒッチハイカーを質問攻めし、彼の情報を一方的に引きずり出します。
向こうが主人公のことを何か聞き出した時点で辞めるつもりでしたが、そうはならず…
☆
タイトルは実際のおもちゃのCMの宣伝文句だそうです、作中でも言われていました。
主人公は色々考えすぎたのかな。その割に思考停止して逃げてるからかえってしんどくなったのかと。
とりあえず無茶な運転やめてください。
ボルボ七六〇ターボの設計上の欠陥について
「元気なぼくらの~」の少し前の話。
浮気・不倫していて、精神的に不安定な主人公の話。
☆
車体と身長のくだりとか、説明書のくだりとか、読んでいるこちらが不安になります。
「元気なぼくらの~」で主人公がどうなっているかわかっているだけに余計救いがないです。
「リッツ・ホテルより~」の続編。
大量にあったはずの地下のクラックはあっという間になくなり、兄弟の立ち位置も逆になっています。
兄が薬をやっていなかった頃、軍に入るより前に薬を売りさばいていた頃。
彼は主人から麻薬をちょろまかしたことがありました。
その主人が兄を見つけ、復讐のため動きます。
結果、兄はやってもない犯罪、子供へ性的暴行を加えた挙句殺害した極悪人として収容されてしまいます。
薬が抜け、正気に戻った兄が無実を主張し外に出ようと動いた結果、なんと短編小説を書くことに。
☆
「リッツ・ホテルより~」のときの兄のキャラが気に入っていたので、前半読むの辛んい辛かったです。
「電気工事ができるようにと思って申し込んだ講座が小説講座だった。何を言っているのかわからないと思うが(ry)」
ここのくだりは不覚にも笑いました。前半辛かった分、ここからはわくわくしながら読みました。
ラストは色々ありすぎて、うぇー…って。いやまあ。全部上手く行くわけないから自分の読み方が悪いんですけども。
最後のあの人の発言は悪い意味で使われていると思います。煽り。
一つの話で、主人公の考えが色々出てくるものが多く、主人公が色々キメてらっしゃることも多く。
読んでいて疲れましたが、普段手を出さないような話の詰まった本なので新鮮でした。
上手く表現できていませんが、ごちゃごちゃした話が読みたい方は是非。